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05:東洋医学で国際協力を

第2章 鍼灸・柔道整復を、現地で信用してもらえるか

山本(以下Y): 今、検索エンジンで「国境なき鍼灸師」で検索しましたが、なるほど。573件ヒットしますね。「国境なき鍼灸師をめざして」(※)これ、本ですね。メキシコ、グアテマラでやってる人がいると、山本慎一さんという方がやっていると。この本、見たことありますよ。国境なき鍼灸師を目指して…思い出した。これ、一応読んだらどうですか、とりあえず
(※):「国境なき鍼灸師をめざしてメキシコ・グアテマラを行く」青木書店 (2000/07/19)山本慎一著

コボさん(以下K): はい。

Y: それらしいことをやっているので。あとは、青年海外協力隊や国連ボランティアで行くのが一般的なんですけれど。青年海外協力隊に、鍼灸師はあるんですか?私の記憶にはないのですが。
(補足)青年海外協力隊の保健衛生部門に、鍼灸マッサージ師というのがある。ただ、項目としてあっても、各国からの要請が定期的にあるかどうかはまた別。平成17年は募集されているので、要請があった模様。この青年海外協力隊の半年ごとの募集の中に、鍼灸マッサージ師が入っているかどうかを、毎回チェックすることをお勧めする。

K: ない気がしますけど。

Y: そうですよね。国際協力…これは非常に難しいな。機先を制するつもりはないのですが、やはり現実を言わないとならないで。2つあるんですね。8割の意見と2割の意見、私自身は別に西洋医学にかたよる気はないんですけれども、一般論として8割は西洋医学を信じますね。まず、確実に「治る」からですね。東洋医学は治療に対する効果の個人差が非常に大きく、バラツキがあるというのが私の医者としての印象ですね。それは、なさってるご自身としてはあまり思いませんか?

K: それはそうですね。急性期や慢性期で分けて考えたら、慢性的な疾患の分野では、東洋医学が比較的、効果を上げると思いますが、急性的な疾患に関しては、やはり西洋医学の方が勝っていると思います。

Y: 一応、これを読んでいる人がいるから解説すると、例えば肺炎を治すのであれば東洋医学ではちょっと無理です。西洋医学の抗生物質を使えば、ほぼ100パーセント治るのですが。

東洋医学が一番活躍するケースは、西洋医学でどうしようもないケースというのが色々あって、例えば、頭痛や腰痛ですね。神経症、あとは慢性的に西洋医学では治らないケース、女性の片頭痛や月経困難症(生理痛)のようなケース、西洋医学ではすっきり治らない場合に、東洋医学で効くことがあるというのが、現在の一般的な考え方です。

私はもちろん西洋医学出身の医者ですから、やや偏っているかもしれませんが、世界の多様性を提唱している立場上、東洋医学の可能性や民間療法も否定しないのですが、現実問題どちらかと言えば、西洋医学では、注射で血圧を100上げることも100下げることもできるんですよ。100パーセントの確率で。

東洋医学では、この100パーセントの確率では無理ですから、頭痛と腰痛ではよく効くとは言われていますけど、それは少し置いておいて、基本的には一般論として、欧米の西洋医学を使う医療のほうが、国際的には認められている、というのが現状です。それが世界の8割の人の考え方ですよね。一方で、2割くらいの人、なんと途上国側ではなくて、アメリカ人やイギリス人で、オリエンタル、東洋の香りがするのがかっこいいと思っている人が、ヨガであるとか東洋医学に傾倒して、漢方や針灸をやるというのが先進国側で流行ってますよね。

これが途上国側ではどれだけ効果があるかというとですね、もともと鍼灸師がいる中国付近ですと、ある程度やれる可能性があると。ただ、そこは中国の鍼灸師がいるわけだから、わざわざ行く必要はないですよね、少数民族のいる田舎を除けば。東南アジア、アフリカ、南米、中東でどうなるかという話になると、現地の人たちが、東洋医学をどう評価するか、評価する以前にぱっと聞いたときに、例えば英語でオリエンタル・メディスンなり、英語でなんて言うんですか?

K:アキュパンクチャー(※)ですか

(※):針灸 acupuncture and moxibustion 鍼灸師 a practitioner of acupuncture and moxibustion

Y: アキュパンクチャーなり、オリエンタルメディスンなりと聞いたときに、第一印象で何を思うかですよね。その言葉だけを聞いて。オリエンタルメディスンやアキュパンクチャー。あと、柔道の整復はなんていうんですかね、英語で。

K: 柔道の整復は・・・

Y: 柔道は柔道だと思うんですよね。

K: そうですね。(参考):接骨術 bonesetting 接骨医 a bonesetter

Y: ボーンリアレンジメント(bone rearrangement)ですかね。ボーンリアレンジメント。バイ柔道、柔術(by judo, by jujitsu)になると思うんですけど、柔道は割と国際的な認知が高いから信用してもらえる可能性あるかもしれませんね。オリエンタルメディスンとアキュパンクチャーは説明しないとどうしようもないですね。最初に1分ぐらいで、長くても3分くらいで、説明して信用してもらえるかというのが全てですよね。自信ありますか?

K: ・・・

Y: 例えば、山本慎一さんという方が中南米へ行ってますけれども。

K: 3分間で納得してもらうというのは、まだ自信がないですね。

Y: ないですよね。

K: はい。

Y: もしもそれでも今後やりたいのであれば、私はかなり堅実主義なので、例えばブラジルやペルーには百万人単位の日系人がいるので、そこでまずやるわけですよ。日系人社会である程度やって実績を出したと。商売でやろうがボランティアでやろうが成功したと。そうすれば口コミで、ペルーの日系人から現地の純粋なペルー人や、ブラジル人に、スペイン系やポルトガル系の人に広がると。そして、現地の人に広がっていく可能性はあるかもしれないですね。確実にいきたいのであば、私だったらそういう方向性でやりますね。

K: なるほど。

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