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民間組織 01 国際環境NGO FoE ジャパン 野口栄一郎さん、35歳、男性

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インタビュー:黒川

書き起こし:海老原、深井

文章校正:山本、ご本人

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パート6.<ロシアでの活動〜RICOHとの協力〜>

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黒川 主にどちらへ行かれたんすか?

野口 やっぱ一番多いのは、「ビギン川」って所ですね。北緯46度位の、んー、ここが一番、いろんな意味で(思い入れがあります)。あのー、日本が50年位、半世紀位、木材を買い続けてきた、その産地ってことがあるし。それから、日本人の親戚のような、少数民族、先住民族の人たちがいる。あと、それから…。

黒川 ウデヘ族ですね。

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野口 ですね。それから「アムールトラ」という、絶滅品種のシンボルみたいな獣にとって、(ビギン川周辺の森は)もっとも大切な、重要な場所であると。複合的な理由が2つ、3つ、4つも重なって、ビギン川に行く事が多かったですね。あとは「サハリン」とかね。それから僕自身は行きませんでしたけれどね、僕の仲間は、「カムチャツカ」とか、えーそれから「バイカル湖」とかね。僕は、僕の仲間は、まー、いつもチームでやってましたけれど。相棒とかなんかも、カムチャツカ、サハリン、バイカル湖。環境問題が起きている所、それから野生動物の生息地が危険にさらされている様な所なら飛んで行きましたね。でーそこで現地で活動しているNGOとか、ロシア人科学者などの、活動してる(人)とか、活動する意思のある人達を探して、応援する、支援するって活動をやってましたね。

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黒川 それは、経済的にも?

野口 そうですね。あのー、ものすごく資金が必要ですね。資金は必要ですね。それからあと、そういう場所に環境問題が起きて、その生態系に迫ってる危機があるということ。それから、その問題を解決しようとしている人たちが、ロシア人が存在するっていう事を、日本の新聞とか、アメリカ(などの)、英語圏のメディアで、ニューズウィークとかでもいいんですけれど、ニューヨークタイムズでもいいんですけれどね。それを、木材の輸出先になっている日本(など)のメディアに、例えば僕らみたいなNGOが間に入って、紹介するとか、記事が出る様にするとか、ニューヨークタイムズとかにね。

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野口 えー、そのシベリア極東っていうのは、まあ地球の上で言ってみれば僻地なんですけれど。そこにある環境問題、それに取り組もうとしている人達が存在するってことが、ロシアの、海外っていうか、まあロシアの外に知られるように、活字になるように。えー、まあしょちゅう、新聞とか、テレビ、CNNとか、NHKのお手伝いとかもしましたけれど。現地で案内したり、コーディネート出来る人間っていうと、なんか僕らしか、自分達しかいなくて、というか僕らになっちゃう。だから、その常にいろんな人たちの間にいましたね。繋ぎ役っていうか、橋渡し役っていう。繋ぎ役をやる部分である自分は、必ずしも、サイエンティストじゃなくていい。

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黒川 で、もう、ロシアと日本を行ったり、来たり?

野口 もう30回以上。僕36歳ですよねー。多分そろそろ、行った回数が自分の年齢を追い越すんじゃないかと思うんですけれど。33回か、34回かだと思うんですけれども。もうある時点で数えるの辞めちゃった。ただじっくり、じっくり一晩考えれば正確な数、わかると思うんですけれど。まー多分、33回か、34回ですね。

黒川 年に3回位?

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野口 そうですね。ここ平均してですね。今年が12年目で、まあ、33、34回ってことは、年平均で2、3回って年もありますし、1年間5回って年もありますし。

黒川 一度行くとどの位、いらっしゃるんですか?

野口 その時々ですけれど、最近はー、1ヵ月位ですかね。

黒川 1ヶ月位?

野口 うーん、1ヵ月から1ヶ月半位じゃないですかね。

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黒川 先程リコーさんの話が出ましたけれど、今リコーさんと一緒に、プロジェクトをされていますよね? どういった、もうちょっと具体的にお伺い出来れば?

野口 えーとですね、プロジェクトの名前は「リコー・FoEジャパン・北限のトラ生息域・タイガ保全プロジェクト」です。リコーさんの中での位置づけは、リコーさんが社会貢献、CSR(企業の社会的責任)の一環として、取り組まれている、森林生態系保全という事業、というか活動、森林生態系保全、ですね。

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野口 で、あのー、リコーさんはもう、森林生態系保全の事業として、今まで数年間、国内とそれから海外の数ヶ所で、現地のNGOとか、NPOとかと協力して、パートナーシップとして森林保護プロジェトを進めていると。えーと、僕、現地には行っていないですけれど、国内だと黒姫、CWニコルさんが活動されている所とか。海外だとアフリカのガーナとか。それからボルネオだったかな、オラウータンがシンボルの。

黒川 はい。

野口 で、そういう(風に)国内海外、複数こう進められているプロジェクトの1つとして、新たに2004年から、この「リコー・FoEジャパン・北限のトラ生息域・タイガ保全プロジェクト」っていうのが始まったんですけれど。プロジェクトで守ろうとしているのは、プロジェクトのその名前の通りというか、世界の野生のトラが住んでいる北限、生息域の北限ですね。だいたい北緯46度位と、ちょうど日本列島の真北。でー、ロシア、国はロシアになるんですけれど。そこに野生のトラが、まだ数10頭ですね、ここの森林地帯に、えー、50頭位、野生のトラが生息していると、推測されてますけれど。

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黒川 50頭しかいないということですよね?

野口 えっとですね、あのー、アムールトラって、北の寒い所にいるから、1頭、1頭のなわばりがものすごく広いんですよ。だからあのアムールトラ自体が亜種。トラの、トラっていう種の下の亜種。(その)種は地球上に500頭、野生の個体が500頭いると言われています。推定ですけれどね。

黒川 活動範囲が広いから確定ができないってことですよね。

野口 そうですね、広いですね。全部のトラの、数を数えるのは、物理的に不可能ですね。

黒川 ううん。

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野口 あのー、なので科学者が、あくまでも科学者が出した推定頭数で。その推定する根拠、ベースになるデータっていうのは、数年に1回、2年間かけて、冬の降雪期、地面に雪が積もってる時期に、なるべく広い範囲で、それからあちこちの、トラの生息域のなるべく多い箇所に、専門家とそれから地元の猟師やなんかが、道先案内の感じで行って、雪の上のトラの足跡を数えるんです。でもそうやって数えられる、カウントできる足跡は、あの多分、実際のトラの一部なんですけれど。何分、アムールトラ500頭の生息域って、日本の本州といい勝負位の広さだと思うんですよ。なのでそれだけの面積を全部、くまなく人間が歩いて雪のあとの足跡を数える、(というのは)無理です。あのー、どんだけ調査資金があっても、どんだけ優秀な科学者がいても、物理的にそんな面積、カバー出来ないです、なのでえーっと、この500頭という、(数を)割り出す、はじき出す為の調査ってのは、2年間なんですけれど。2年間だし、調査資金はまあWWFとかね。

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野口 そういうところから一応は大きい金額は出るんでしょうけれど。でもあのー、全部の生息域カバーするのは無理でしょうね。でまあ、推定頭数500頭と、言われていますけれど。このビギン川流域、森林地帯は、えーっと、その10%にあたる、500頭の10%にあたる50頭くらいのトラが、今も、野生の暮らしをおくれている、貴重な場所と言われています。それから絶滅救種の「シマフクロウ」が30つがい位、いるんじゃないかと。で、シマフクロウがこれだけ生息して繁殖出来るっていうのは、その川に、魚が多いっていうことです。シマフクロウって、主なエサが川魚なので。それだけ魚がたくさん住める、いい川だっていうことですね。全長580キロくらいの川なんですけれど。

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野口 今の所、その川の両岸、上流から中流にかけて、人工的な建造物とか、護岸工事とか、コンクリートとか、セメントとか、殆どないですね。なのでこう、蛇行を繰り返す手つかずの川。日本の川で言うと、昔の石狩川とか釧路川のような姿の川ですね、「原始河川」っていうやつですね。でー、日本は、日本で元々580キロも流れてる川なんてありえないですし。元々あった川も、日本では原始河川の姿で残っている川は殆どないですけれども、ここに行けば今でも見られます。それからあのー、生えてる木、植生は日本の北海道ととてもよく似ています。

黒川 うーん。そこで森林伐採が問題になっていますけれども、その森林の木の種類というものは?

野口 えっとですね、あのー、長年、伐採、大規模伐採。「クリアカット」で、大規模に伐採されているタイプの森林は、「カラマツ」と「エゾマツ」の針葉樹林ですね。

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野口 「カラマツ」はまあ、山の比較的日当たりのいい斜面、それから「エゾマツ」は日当たりの悪い方の斜面に生えるとか、違いがありますけれど。ロシアの極東へ行くと、ヘリコプターで飛んでると、カラマツやエゾマツが一面びっしり、こう、山肌を覆っている。生け花の剣山みたいな針葉樹林になっています。こういうタイプの森林が、20世紀の間、各地で伐採されました。

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黒川 何に使われたんですか?

野口 ここの木材、ここで切り出したカラマツやエゾマツは、住宅の建材になりますね。「紙」(になるわけ)ではないです。主な用途は、建材、建築ですね。それでその、ロシアの極東といわれる、この地域の場合だと、ソ連時代は、伐採された木材の、50%は、(その)地域で消費されてましたね。域内消費

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野口 それで、残りの25%(ずつ)。(二つの)25%に別れるんですけれど、25%は、旧ソ連内の森林の資源の乏しい国、キルギスタンとか、そういう国に輸出されていましたね。シベリア鉄道で運ばれてました。で、残りの25%が、輸出されてたんです。ソ連時代の木材輸出公団が、輸出してたんです。その輸出先の80%位が日本でしたね。最大の輸出先が日本でしたね。で当時はまだ、中国が輸入する量とか、韓国の輸入量は少なかったです。

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野口 で、日本では何に使ってたかっていうと、住宅の建材で、国産のスギ、ヒノキよりも安い。それからあと、アメリカやカナダのいわゆる北米材よりも安い。それからそのー、マレーシアとかインドネシアから来る熱帯材とは使い道が違う。木の種類が違うから使い道も違う。大体、用途は、木造住宅の、部材。で、例えばエゾマツとかは、「タルキ」とか「ノブチ」って呼ばれる所なんですけれど、分かりにくいですねー。あのー、人間の体でいうと、あばら骨みたいなもの。家のあばら骨みたいなの。

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野口 家が出来あがっちゃうと、隠れて、住んでいる人の目にもいらない、地味な場所に使われていたんですけれど。まあ安かったと。でもロシアの木って、枝打ちもしていない自然の木なんで。木材にしたとき、見た目はあんまりよくないです。見た目はあんま良くないんで、目に見えないところに使われるんですね。日本の人は木造住宅の見栄え、とても大事にしますからね。カラマツは、見栄えは良くないんですけれど、(昔は)頑丈なのと、腐りにくいので結構使われたリしていたみたいですね。ただまあ、カラマツは昔から日本の大工さんに「ロシアのカラマツなんて」って言われて嫌われていたんです。あのー、とりあえず「取り柄といえば腐りにくいのと頑丈なのと、とりあえず安い。それくらいしか取り得ない。」って言われてたんです。しかし10年くらい前から、新しい用途が生まれて、(それは)合板ですね。合板って、あの合わせる板って。 

黒川 はい。

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野口 ベニア板とかもその一種ですけど。あの、昔は日本って、合板ってものは、毎年、合板メーカーって呼ばれる企業があって、大量に一定量、製造、生産、販売されて使われていたんです。それが原因で、合板の材量は、昔はマレーシアとか、インドネシアの熱帯の木だったんです。ラワンと呼ばれる。昔は熱帯雨林、東南アジアの(木材)で合板作っていたんですけれど、もうそのインドネシアとかマレーシアで、そのラワン材がたくさん採れなくなってきちゃったんです。まあ切り過ぎたんでしょうね。

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野口 それで、どうしよう。これからもう材料がもうないって言ってたときに、そこで国産の合板メーカーさんは、「ああーロシアのカラマツで代わり作れるかもしれない」って。こう試験してみたら、あの、まー合板作るのに向くっていうんで、新たに需要が生まれていますね。で、だいぶ話が木の話に行っちゃってますけれど。現在はあのー、えーとですね2001年からは中国や日本を抜いて、ロシアの木材が最大の輸入国になっていますね。

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黒川 うーん、じゃリコーさんは、ロシアから輸入してる木を使って、紙を、コピー用紙を作っているからから、援助をしているわけじゃないんですね?

野口 そういうコンタクトにはなりませんでしたね。最初、確かリコーさんからその環境コミュニケーション推進室とか、だからこうアポ、アプローチ頂いた時にロシアの森林というのはどうういう重要性があって、どんな問題がありますかって時に、紙の材料になりますかって聞かれたんですけれど、そんときは紙の材料にはなってないんで。

黒川 リコーさんから?・・その、お話があったんですか。

野口 僕ら、見つけてもらったっていう感じですね。リコーさんが普段からいろんなNGOやNPOさんに会って、目的に一致するところがあれば、パートナーシップやりたいって。

黒川 ふーん。

野口 僕らから、ロシアでこんな事おきてるんですけどって、言ったわけじゃないですね。.

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