NPO法人 宇宙船地球号 補足サイト

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J. 現在、どのような活動を行っていますか?

 国連ボランティアとして、ある国連機関に所属し、南太平洋地域で現在も存在する感染症を撲滅するプロジェクトの、プログラムアシスタントコーディネーター(長いタイトルだけど、要は何でも屋みたいなもの)として活動してる。そこでは南太平洋の各国でおこなわれているこのプログラムが滞りなく行われるよう、他の組織(各国政府、日本政府およびNGO等)と調整、協力して各国の活動を支援してる。南太平洋地域はひとつの国が数多くの島国から成り立っていたり、点在したりしているから、それぞれの国が独自にプログラムを行なうのは手間や人材、そして費用の点で大変なんだよね。そこで、ひとつの地域として太平洋諸国が互いに協力しあい、みんなで効率よくプログラムを押し進めましょう、と考えでこのプロジェクトは成り立ってる。僕はそこで仲介役みたいな事務仕事をしてます。
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  a. 活動している国は、どこですか?(その国の宗教、言語、民族、戦争・内戦しているかなど簡潔に)

 活動国:フィジー。名前だけは結構有名だと思う。新婚旅行で有名のはずだし、日本人が観光で訪れる国としていくつかの先進国についで多いらしい。

 民族、人種:フィジー人54%、インド人39%、その他7%。もともとフィジー人しかいなかった土地に、イギリス植民地時代にインド人が労働者として大量に移住してきたため、南太平洋にはめずらしく人口の半分近くをインド人が占めている。政治も人種が絡むから、最近では2000年にクーデターがあった。

 宗教:ほとんどのフィジー人はキリスト教。インド人はヒンズー教、イスラム教など。

 言語:英語が一般に使われているけど、現地語としてフィジー語、ヒンディー語がある。フィジー語はローマ字読みだから発音しやすい(こんにちは:Bula(ブラ))が、ヒンディー語は文字も読めないし発音も複雑だからほとんど覚えられない。どうやらインド人の若い層はヒンディー語で会話出来てもヒンディー文字は読めないらしい。
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  b. 最初の目的は?

現在の活動状況(質問J)とほぼ同じ。
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  c. 最初の計画・企画のあらすじは?

現在の活動状況(質問J)とほぼ同じ。
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  d. プロジェクト全体は、いつからいつまでか?

1999年に始まって2010に終了予定
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    あなたの派遣期間は、いつからいつまでか?

2005年4月から2007年4月まで(予定)
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  e. 現在、日々行っている仕事・活動内容は?(一日の流れを具体的に)

 月曜日から金曜日まで8時から17時までの勤務。ほとんど職場で事務処理。南太平洋地域の国々、その他からのメールチェックは随時行なっている。南太平洋には20以上も国が存在し、我々のプロジェクトではほとんどの国を管轄しているので、活動の動向や必要な情報の収集・提供などを定期的に行なっている。例えば急に「(プロジェクトで使う)薬が足りないので送ってくれ」等の要請があったりすると、在庫を調べてできる限り手配して送ったりしている。でも、毎日そんなにガリガリと仕事しているわけではないから、案外いい加減かも。朝、出勤したら同僚のフィジー人女性との雑談から始まり「昨夜はカレーを食べた」とか「うちの子供がおたふく風邪にかかった」なんていう、たわいもない話をしてからようやく仕事を始める。職場のまわりにはランチを買う店がないから、ほとんど毎日弁当持参。お昼はみんなで食べる。フィジー人は一人で食べることを極端に嫌がるのでいつも誰かと一緒じゃないとダメらしい。食べ物をみんなで共有して分け合って食べてる。おそらく「しゃべり相手」がいないと寂しくて落ち着かないんだと思う。食べるばかりでなく、噂話の共有も大好きで、その日のうちにゴシップが面白いくらいあっという間に職場全体に広がる。男性も女性もおしゃべり好き。
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  f. 活動していて嬉しいことはなんですか?

外国人がフィジーに来て仕事をしている、ということは現地の人にとってはうれしいことらしいんだよね。彼らは日本人よりぜんぜん愛国心があるから、「おまえもフィジーが好きか?好きなんだよな?やっぱりいい国だろ?」みたいに聞かれることが多い。「う、うん、まあね。」といつも答えているけど。やっぱり現地の人達と楽しくおしゃべりをしながら大笑いしているときは気持ちがいいよね。話題は何でもいいんだけど、大笑いするのはやっぱり楽しい。
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  g. 活動していて嫌なことはなんですか?

 できるだけ現地に馴染もうとはしているけど、やっぱり自分が外国人だと感じるとき。噂話をしたり、おしゃべりをする時も現地人同士がまず始めで、やはり後回しにされる。「あら、いたの?」みたいな。現地語が完全にわからないので、現地の人達が楽しそうにおしゃべりしていると羨ましく思ったりする。あと、「外国人だから」と金額をふっかけて売ろうとする人達に出くわしたりすると怒ってしまう。観光地では当たり前かも知れないけど、僕は状況が少しわかっているから、あからさまにふっかけてくる奴には「舐められている」と感じてかなり嫌な気分になる。
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  h. その仕事に周りの人(現地の人)は満足してくれていると思いますか?

 満足してくれていると思いたい。病気を根絶するプロジェクトといってもあまり知られていないし、生命に危険を及ぼす病気ではないので知名度は低いんだよねぇ。仕事がうんぬんというよりは、現地人と人間関係をうまく過ごすと彼らは「あいつはいい奴だ」と思ってくれるみたい。ただ、外国人が現地で活動することは本当に役立っているのだろうか、と疑問に思うことがある。現地の人々は自分達の国で“彼らなりに適応しながら”生活を送っているわけで、それをあえて「向上させよう」とか「便利化しよう」とか勝手に我々が変えようとしているんじゃないか、と思うことは何度もある。もしかしたら、彼らは現状に満足し(というか納得して)生活していて、我々の活動はプラスアルファの部分、つまり「どうでもいい」部分と思ってるんじゃないか、って。
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  i. その仕事は、組織から客観的な評価を要求されますか?また他の組織からの評価は受けますか?その場合、具体的にどのような方法ですか?

  プロジェクトの主な内容は、年1回国民全員に薬を飲んでもらう、というものだから、どのくらいの国民が薬を飲んだかが結果として出てくる。それでその年の活動がうまくいったか、いかなかったかが評価される。でもそれは全体の評価だから、個人の成績とか評価にはつながらない。まあ、全体の成績が良かったら「君も仕事をがんばったようだね」くらいのコメントはもらえるかも知れないけど・・・。任期の間に「私はこれをしました」「これを発明しました」「こんなに良いことをしました」といえるような結果を出すのはほとんど難しいから、「それまでの状態が悪化しないために、とりあえず維持するためにがんばりました」くらいしか言えないです。
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  j. 最後の質問です。あなたは今、幸せですか?

 どちらかといえば幸せだと思う。日本で仕事をして、途中で仕事を辞めて海外に目を向け、そして幸運にも海外で仕事をする機会を与えられた。日本にいた頃、僕は不満だらけで毎日を過ごしていて「自分は日本では適応できないのかも」と思っていた頃があったので、それが海外へ出るきっかけになった、と今では思う。生活レベルや食事、便利さなんかは日本の方が断然良いけど、一度生活してみると生きていけない訳じゃない。「ああ、日本だったら100円ショップで買えるのに」「焼き鳥や焼酎があればいいのに・・・」なんて思い出すことはあるけど、そこにいることに嫌になって逃げ出したりはしないんだよね。まあ、任期があるからかも知れないけど。その間はできるだけ楽しもう、と考えながら生きてるつもり。慣れると「何でもあり」になるし・・・。

 日本ではいつもまわりと比較しながら、そして比較されながら生きてきたように思う。こちらではそれらを比較してもほとんど意味がない。学歴なんてこちらの人が日本の学校を知っているわけないから関係ないし、多少太っていたって、でっかい人は数え切れないほどいるから気にならないし。皮膚の色や器量の良し悪しの基準なんて違うから神経質になる必要ないし。まあ、現地人と日本人とその他の外国人、ということで比較したり、されたりするけど、「だからどうなんだ」っていう結論が出るだけ。結局どうでもいいことなんじゃないかな。

日本で生活するよりはかなり気分が楽かな。やっぱり幸せなのかも・・・。
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