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09:将来は国際精神保健を

第6章 手段としての医者・・・優先順位をどこにおくか

山本(以下Y): あと…もうひとつの選択が、さっきから言ってるJICA専門家ってやつで、あのー………、医者の場合、JICA専門家になる一番確実な道が、あのーふたつあって、一つ目が、さっき言った口コミの紹介ってやつで、もうやってる…精神保健をやってるJICA専門家の人から仕事まわしてもらうっていう方法があるんですよ。

スコーネさん(以下S): うん。

Y: これもネットでガンガン調べて、もうあのーえー…、まぁある程度、経験日数が5年以上いった後に、今多分空いてるイスたくさんあるから、あのー5年以上いって専門医とった後に、電話して、あのやりたいんですけどって言って、その人からまわしてもらうっていうのが一番いいと思いますね。

S: うーん。

Y: で二番目の方法が、あのー…J大の、母校の隣にある、国立国際保健医療センターっていう所の中に、国際医療協力部っていうとこがあって、そこは3つの部があるんですよ。

S: うん。

Y: ええと、ひとつが母子保健、ひとつが感染症、もうひとつが政策って所があって、うちの嫁さんはこの政策にいるんですけど、 はっきり言って精神保健と感染症とかは関係ないから、強いて言えば、政策にいく可能性がありますね。

S: うんうん。

Y: だから二国間援助として、例えば、何でもいいや…カンボジアなりスーダンなりの、あの二国間援助をする時に、その、これからは精神保健の機関が必要ですよ、あなた統計がこうですからね、とか言って、あのーその国に、精神保健システム…その病院をつくるんだろうが、精神科の医者を増やすんだろうが、精神科の、えー…例えば、大学院をつくって、精神保健医専門制度を、例えばスーダンにつくるとかっていうような、その国の総合的な精神保健…だから保健所なんかをつくるとかね。総合的な…要するに医者やるんじゃなくて、はっきり言えば。

S: うんうん。

Y: 医者の先生や、その国の制度全体そのものをつくるっていうような制度になるっていうものが、JICAのいわゆる二国間医療ってやつなんですよ。まぁ政策制限ですよ。完全に。

S: うん。

Y: …っていうのも、ある意味では総合的にできるのでね、ほんとに。省庁を超えて。あのー一番おもしろい仕事のひとつかもしれませんね。

S: うん。それもやっぱりMPHがあってのはなし…?

Y: それはね、JICAの場合は、MPHは必須ではないです。それよりもはっきり言うと口コミが一番重要で、あとは日本で説得する必要があるので、日本の専門医の方が重要になってくるかもね。

S: ほぉ~…。

Y: あとはー…えー…経験年数ですね…。

S: はい。

Y: えー……。

S: 臨床家としての…。

Y: 臨床家としてのですね。

Y: ただMPHはあった方がいいです。何でかっていうと、JICAはあの、10年前くらいからODAのソフト化っていうのが起こって、あの医者…医療とか…、やんなきゃいけないってことで、10年前のJICA専門家医っていうのは、ちょっと言い方悪いけど……馬鹿ばっかりで、はっきり言って、専門医も持ってないと。

S: うん。

Y: で英語もろくに喋れないっていうような、いきなりすごいレベルの低い、英語も喋れずに、専門性もあまりないようなのがいきなり、「心臓外科で何べん行きました」っていうのが始まったんですね。

S: うんうん。

Y: で最近は、これじゃあんまりひどいっていうんで、はっきり言ってその国連経験者であるとか、まぁNGO経験者であるとか、あのーとにかく2年ぐらいは海外で経験したことがありますよと。でMPHも持ってますよっていう人。片方、できれば少なくとも片方がある人が、JICA専門家になるケースが増えてきてます。だから先生が5年過ぎる頃には、やはりMPHがあるか、少なくとも2年くらい、海外で現場経験があるかどっちかがないと、JICA専門家にはなれないと思いますね。

S: うーん。でその、医者として海外に2年っていったらやっぱりNGOっていうのが手っ取り早い…

Y: 普通はだからあの、国境なき医師団にしろ、赤十字の国際部にしろ、Care International にしろ、Save The Children UK かUSにしろ、そういう経験が必要だと思いますね。

S: そうですよね。

Y: ええ。

S: そうするとまぁMPH→NGOなりNGO→MPHなりの順番で、

Y: どっちでもいいですからね。

S: やって、で、更に道が開けるかもしれない…?

Y: まぁ、そうですよね。そこで、どっちの方が好きかってことですよね。あのNGO基本的に現場に圧倒的に近いですからね。自分でその…途上国の人に直接触れたいんならば、NGOしかないんですよ、はっきり言って。

S: うんうん。

Y: でその政策を動かしたり、国際法をつくったりするようなことをやりたいのであれば、あのー…WHOと…、あとはだから2国間以上のJICA専門家ということになりますよね。

S: 例えば、NGOとかMPHとかなんとなくやってみて数年が過ぎて、「あ~自分やっぱりこの分野じゃないな」ってその時に気づいたとしますよね。

Y: ええ。

S: で…、それでまた日本で臨床家やる時に、…もう全く役に立たないものなんですか?なんとなく…、

Y: 海外でやった経験がですか?

S: とかですかね。まぁ…まぁ、日常の臨床には役立つかもしれないですけど。まぁ仕事としてあんまり…MPH…、全くムダにはならないとしても…、

Y: ええ。

S: 「すごい遠回りになっちゃったな」っていう結果も、まぁあり得るものなんですかね?

Y: いや、…それ何を価値観に置くかで全然きまりますよ。あのーはっきり言うと、直接的には全く役に立ちませんね。ただ私いま日本に戻ってきてから、それこそあのー、医者の人材派遣会社 兼、あのー何だ、就職斡旋(あっせん)会社って所に私5こ位登録していて、そのうちのひとつから紹介してもらった、千葉の…まぁ某病院で内科の外来なんかやってるわけなんですね。で、あのー就職はもちろんできますけども、あのーで別にそのー、私の母校の、慈恵医大の、あのー例えば教授になりますかと、もしくは医長になりますかっていうのは全然ないですね。

S: あ~そうですね。

Y: で、慈恵の側から頼まれて講演を、年2,3回くらいやってますけども、それは別に…「それがどうした」っていうだけですから…、あのー…、で、正職員にも戻れないですから。非常勤講師、ですらないですから。あのー役には全然たってないですね。

S: うーん。

Y: ただ、あのー広い意味では、そういう、大学で出世した……要するに教授になりたいとかいう意味では全然役に立たないけれども、広い意味では役に立ってます。なんでかっていうのはその…、まぁ「世界の多様性」ってよく言いますけども、まぁやはり実感すると全然ちがいますので、日本で臨床やる時に、全然あのー…はっきり言って、今の私は医者というよりもあのー、なんかその…お金がなくても…まぁ自分が医者という感がないんで、「ああこういうことなんです」「ああそうなんですか」っていう医学的第三者のように、「西洋医学の医者は、こういうこと言ってますよ。私はそれを勧めも強制も否定もしませんけど、どう思いますかね、いや、どうでもいいと思いますけどね。まぁ西洋医学以外にも東洋医学もあって民間療法もあって、あの…ほっとくっていう手もあって、あの、どれでもいいと思いますよ。」っていう風に非常にあのー西洋医学を客観的な目で見て、方法のひとつにすぎないっていう風な目を持てたっていうのは、あの個人的には良かったと思ってますね。

S: うん。
S: それで今も、医者は臨床家っていうのは…、

Y: 金稼ぐ手段として割り切ってますよ。

S: ああ~、道具っていうか…?そういう感じで…?

Y: そういう感じですね。

S: 今はまぁ、NGO活動の方が、あのー…もっぱらNGOというか。

Y: そうですね。まぁNPO法人運営するので結構大変だけど…。あの、国内で独立して自分のひとつの、まぁひとつの法人をつくってるわけだから、社長をやってるわけですね。いわゆるまぁ。

S: うんうん。

Y: で要するに、金の計算だけでも…あのー大変ですよね。

S: うんうん。

Y: で、くだらない…くだらないと言えば…総務とか、人事とか、事務みたいなこともやってるのが、…まぁはっきり言って勉強になると思って…、今年今2年目ですけど、やってますよね。まぁこれもまぁ、勉強かなと思ってますね。

S: うーん。
S: NPOだけだと、やっぱ生活していくのはなかなか大変…っていう感じですかね?

Y: ええと…、えー無理、ですね。あのだからええと、国境なき医師団にも書いてありますけど、月給はだって、5万円ですよ。

S: うん…。

Y: であのー、AMDAは25万くらいでますけども…あ、これ言っていいのかな…。(笑)あのそれは例えばカンボジアに、例えば1年派遣されたら、その1年だけなんですよ。すこーねうん。うん。

Y: で帰ってきたら、それはAMDAの仕事じゃないんですよ。だから「はいさようなら」で、

S: あ、

Y: 国境なき医師団も同じですけど、収入ゼロに戻るわけですよね。

S: あ、あそれはまぁ自分が派遣される…こうまぁ何ていう…歯車のひとつになった場合ですよね。
S: で今、先生が経営している立場からすると、まぁ本を出したりだとか、色んな企画をしたりとか…、

Y: あ、それはね…、うちは、私はちょっと特殊なNGO・NPOつくりまして、あのー私はこういう、今あのーあなたに話しているように、「プロの国際協力師になりなさい」っていうことをやるんだけども、自分の団体自身は、実は全員ね、あ、さっきまで2、3人いましたけども、ボランティアでやってるんですよ。

S: うん。

Y: 要するに募金などのお金は全額プロジェクトに使うと。

S: うんうん。

Y: 間違いなく100%、人件費にも事務所の家賃にも使ってませんよ。っていう団体を当面やりたいなと思ってるんですね。

S: うん。

Y: 00:37:10はしませんけども、当面は、あのー私はそれでいきます。そうですね、はい。その方がちょっと、わかりやすいものですから。00:37:20。給料だしはしませんけども。

S: うーん。

Y: まぁ今のところは、そういう方針でやってます。はい。

S: そうすると厳しいは厳しい…?

Y: だから自分であのー、千葉の外来で、内科でおうねい(00:37:40)とってきて、年のまぁ半分くらいは、要するに医者やって金稼いで、で残りの時間で、こういったNPO活動なんかやるって感じですね。

S: うん。
S: まぁ、じゃあ…何ていうんですかね…こう、医者はまあ道具としてやって、でまぁ別に嫌いな仕事じゃないと思うんで…、まぁそれはそれで。苦痛とかではないと思うんですけど、

Y: はい。

S: 残りの半分実は全力投球できたらそっちの方がいいなっていう所だとは思うんですけど…。

Y: いや~それはね、それはちょっと難しいところですよね。それはあの価値観の問題で、実はあの、私そういうのは持ってないんですよ。私の話なんで、あんまり参考になるか知りませんけども…。

Y: さっき言ったような、WHOに就職できたら、年収…先生だったら多分800万くらいです。で、今の年収多分、1000万いってるかしりませんけれども、まぁ勤務医でしょうから多分、まぁ900万くらいでしょうね。ちがいますか?

S: んー…、ちょっとあんまり考えたことないですけど…。まぁそんなもんですかね。

Y: ですよね。普通あのー、勤務医が1000万弱、か前後くらいだと思うので…、だからWHO就職すれば同じくらいなんですよ。あと、JICA専門家もね、ええと…、600万~900万の間くらいです。ですからそんな変わらないですね。食うにはまぁ、全然十分。あとだって現地にあの、住居とか、食費全部だしてくれるんですから。

S: そうですよね。

Y: それ考えると1000万こえますからね。えーというわけで。ところがNGOの場合は、あのー国境なき医師団の5万円が最低ですし、AMDAの25万も、はっきり言ってたいした額じゃない。だって12倍したってたかが知れてるわけでしょ。年収300万とか400万とかそんなもんですよね。

S: うん。

Y: 国内し…(00:39:20)…もいかないわけですから、これ全然生活できないんですよ。

S: うん。

Y: だからそういうNGOでやるんだったら、基本的に年のまぁ少なくとも半分は、さっき言った派遣会社…私の本にもよく書いてありますよね、

S: うん。

Y: あのー、医療系の派遣会社である、まぁ一応実名を言うと、ええと医療系だったら…、メディカル・プリンシプル、ええとあとは、リンクスタッフ、…などが大手ですね。などが5社から10社くらい東京だけでもあってですね、そういう所に登録すると、いくらでもバイト先や、もしくは常勤先を紹介してもらえるので、そこに就職して、半年くらいやったら、また金がたまったら、そのNGOにいくっていうのを、繰り返すんですよ。

S: うん。

Y: ええー、で、これが先生の場合の一般論ですね。

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