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09:将来は国際精神保健を

第5章 MPHはどう役に立つのか

スコーネさん(以下S): MPHでやったことって、やっぱり実質すごく役立つものですかね?その…学位とかとはまた別に…。

山本(以下Y): あの全然役に立ちますよ。まず統計学・易学が、必ず勉強するんですけれども、それが例えばあのー…、クラス化サンプリングっていうのが国際協力で一番使うんですけど、それは精神保健も全く一緒なんですよ。要するにこういった統計学の手法っていうのはプロジェクトを始める前に、その地域でどんなプロジェクトが必要なのかっていう事前調査を必ずやるんですね。

S: うんうん。

Y: 自分でやるか人にやってもらうか別にして、人にやってもらったものが理解できないと意味ないですから。

S: うんうん。

Y: だからそういった統計調査ってまず絶対必要ですよね。であとは…、そのー医者をやる場合でも、それがあのー精神保健であろうがAIDSであろうが全く同じなんだけれども、医療だけやるのではなく、人権への配慮だとか、教育省との連携で、あの、様々な教育やんなきゃいけないとか。あとそのー、省庁との…その、プロジェクトを国に教えて定着させるっていうような技術とか、あのーファブリック…アドミニストレーション的なこととかが全部必要なんですよ。

S: うーん。

Y: あと予算…お金の面とかですね。あとはー…、プロジェクトプロポーザルといって、あのー、プロジェクトを書いて、国連からお金とってくるっていうのもそうなんですよ。(笑)アメリカとイギリスの大学院で…。それも当然必要になりますし、あらゆる意味で総合的な…、医療だけでは全然ないことを教わる意味で、絶対必要ですよね。

S: うーん。あとMPHを持っているかどうかで、まぁNGOで雇ってくれるかどうか、そこで競争で決まったとしても、あのーMPHを持った状態でNGOの活動をするのと、持ってない状態で活動するのとで、こう有意義度数というか…は変わりますかね?

Y: NGOのことを言ってるんですか?

S: NGOの…。まぁWHOとかだと圧倒的に変わりそうな…気がするんですけどー。

Y: ていうか、入れないですね。あのー、国連は、修士が必須ですから。

S: うんうん。

Y: 修士か博士もってないとまず相手にされませんからね。必須ですね。JICAは関係ないですけどね。あのーNGOの場合は、えーと…AMDAは必須です。

S: うーん。

Y: NGOはピンからキリで…、年間予算が10億円を超える、…例えばPeaceWithJapanとかAMDAのような大型の団体は、はっきり言って必須ですよ。えー、その代わり国連とかから金もらってきて…。で大学院修士の人がやるんだから、ある意味では国連と同じレベルの仕事をしているわけですから。

S: うん。

Y: あのー修士は必須ですね。

S: うーん。

Y: で、AMDAは割と…開発援助といって、あのーJICAや、国連のような、その国の政府と交渉しながら、あのー…その国に定着させようっていうのを開発援助っていうんですよ。そういうのをやるんですね。

S: うんうん。

Y: 国境なき医師団っていうのは、緊急援助だから、はっきり言って大学院修士は全然必要ないんですよ。

S: うん。

Y: 医者であればいい。はっきり言って。

S: うん。

Y: で…、いきなり、何の資格もない人がバァーと行って、とにかく困ってる人に何かすると。それが精神保健だろうが、まぁ5年くらいの臨床は必要だと思いますけど、修士は全然必要ないですね。で、あのー、困ってる人に何かやると。

S: うん。

Y: カウンセリングだろうが何であろうが何かすると。…ということをやるのが国境なき医師団なので、あのー…敷居は低いですよね。はるかに。

S: そう思うと精神保健どっちかっていうと、緊急管理というよりは開発援助の…、度合いが大きいと思うんですけど…精神保健、は…。

Y: いやだから、今実際私JICAのJDRっていう緊急援助隊っていうのに入ってるんですけど、実はね、緊急援助で、その例えば…、PTSDになっちゃった人を治療するっていうのも大切なんだけど、実は今話題のひとつが…、PTSDになっちゃったらもう治らないんだよ、実は。

S: うーん。

Y: なる前の段階で、何とか精神的なケアができないかっていうのが、今JICAのJDRって所が、あのーやってるんですけども、あーこれおもしろいな、と思って来たんですけどね。だから要するにあのー、緊急状態になった時に、ボロボロになっちゃった時にね、まぁとにかく、はっきり言って食い物やって、あの、水…点滴してるくらいじゃないですか。

S: うーん。

Y: その段階からある程度ケアを始めたらおもしろいんじゃないかっていうのがあってですね。

S: う~ん。

Y: この分野がありますよ。これが今一番ホットですね。えー、で……というのもありますね。

Y: ただ一般的には、あのー緊急状態の時には、一般的にはですよ?今言ったのは極論で、一般的には緊急状態の時は精神保健なんかやる暇ないですから…。

S: うーん。

Y: はっきり言ってWFPが食べ物配って、国境なき医師団が、治療をやるんですよ。国連はね、どこも来てないです。はっきり言って。で、落ち着いたころ…、戦争が終わって5年くらい経った所にようやくJICAがのこのこ来て、開発援助っていうのを始めるんですね。

S: うん。

Y: そこでその、精神病院建てることもありますよ。PTSDになっちゃって治んない人に、あの何とかしようかねって感じでそのー…、精神保健の病院をつくったりするのも、ありますよね。

S: ふーん…。

Y: で、そこの需要はあると思いますね。

Y: あとー…あとそうですねー、WHOが2年くらい前から、そのー、人権…医療系だけじゃなくて、全ての科において、人権の配慮が必要だと。

S: うんうん。

Y: これはジェンダーだとか、精神的な障害を持つ人だとか、全てなので、それが、例えばILO…労働だろうが、ええと何だ、UNHCR…難民だろうが、えー何だ…、とにかくあらゆる分野で、あのーそのジェンダーとか人権とか、その精神保健への配慮とかを、全ての国際機関で教えるんだってことを、今やり出してるんですよね。

S: うん。

Y: で、そこの講師になるっていう道もあると思いますよ?

S: うーん…。

Y: はっきり言うと、要するに…、将来あなたILOの、全然(精神保健と)関係なさそうな労働組合いって、「精神保健の雇用を、こういう風にやんなきゃいけませんよ」っていうような講師になるっていう道も、そのILOであろうがUNHCRだろうが、そんなこと知りませんけど、

S: うんうん…。

Y: …っていう道もあるとは思いますよ。

S: でその色んな側面でやっぱりあの、まぁ出会う人たちとか、受ける地域によって…、

Y: 全然変わっていきますよね。

S: 変わっていくっていう…ことですよね。

Y: ええ。ええ。

S: まぁそこまで行くのはMPHがないと始まらないにしても、

Y: はい。

S: MPHをとる…NGOだったら、まぁMPHがなくても入りうる可能性がなきにしもあらず…

Y: そうですね。

S: …っていう意味でMPHの、例えば、受験の前に一応打診しつつ…みたいな。

Y: そうですね。

S: っていうタイミングがいいんじゃないかってことですよね。

Y: そうですよね。

S: 逆に言うと、MPHの前にWHOとかに打診しても、全然もう、

Y: 意味ないですね。

S: 意味ないってことですよね。

Y: はい。そうですね。

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