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07:医療か人権

第2章 将来と、国連・JICA・NGOの現実

山本(以下Y): 「世界と恋するおしごと」は読んだ?

エジプトさん(以下E): はい、ただ結構前で、あまり覚えてません。

Y: あと「世界で一番いのちの短い国」は読んだ?

E: それは読んで感想文書いて、読書感想文で賞をもらいましたよ。

Y: そうなんだ。なんか聞いたような気がする。ありがとうございました。

Y: あのような現場型の医療をやりたいの?

E: わかんない。医療系でいくかどうか。

Y: 医療系ではない場合、何がやりたいの?

E: UNICEFやJICAの職員とか。それなら文系ですよね?

Y: うん、そうだよ。あとは「つなぐ」仕事、ちょっと難しいんだけど。

E: はい。

Y: 国際協力をやるためには「考える人」といって、日本で考えてる大学教授みたいな人と、もうひとつは「つなぐ人」といって、JICA職員みたいな人で裏方にまわる人と、実際に現場で「やる人」というのがあるのね。3つとも同じくらい大切なんだけど、途上国の現場でやる、例えば医者や看護師、学校の先生が直接途上国で教えるというのは、NGOしかやってないんだ。国連やJICAの仕事は主にね、「つなぐ」仕事をやるのよ。俺の本を読んでるから知ってると思うんだけど。

E: はい。

Y: だから「つなぐ人」は、ほとんど全員文系だね。

E: そうですよね。

Y: JICA専門家というお父さんがやっていた仕事はね、「つなぐ人」と「やる人」の中間くらいだよ。つまり患者の治療はしないけど、現地の人を教育して、もしかするとオペルームのセットアップとか、病院のプロデュースというか、ここに病院をつくって医者や看護師が何人必要で、手術室はこういう風なのが必要といったことを指導するのがJICA専門家なんだよ。「つなぐ人」と「やる人」の中間くらいがJICA専門家。JICA職員は、完全に「つなぐ人」。

JICA職員の場合、書類を書いて会議をして、7割は日本側にいて3割は現地へ行っても都会にいると。いわゆる「本当の現場」には、別に悪く言うわけではなくて、行かないんだよ。

本当の現場へ行くのはNGOとJICA専門家の一部。国連のUNICEFもJICA職員も、この「つなぐ人」なんだよね。

E: なるほど。

Y: そういうのは好きなの?コーディネイト、人と人をつないで裏方にまわると。要するにね、国際協力がやりたいくて俺のところへ来る人で1番多いのが、「直接貧しい人の村に行って、直接自分で何かやりたい」という人。教育したいとか医療したいとか、食糧配りたいとか、「やる人」ね。それは実際NGOしかやってないから。ただNGOはお金にならないから、いいんだか悪いんだかっていう話があるんで。

最終的に、プロになりたいの?

E: はい。

Y: 事実上、プロになりたいなら、国連がJICAにいくしかないから。NGOで給料が20万円以上でるのは、ごく稀なこと。国連かJICA職員のコーディネイトか、もしくはJICA専門家という「やる人」よりのことをすんですよ。

E: そういう公的機関でということですか?

Y: うん、そうだね。民間のNGOで、給料が出るケースは稀なんだ。NGOも考えてるの?

E: 何がいいのかわからないので考えてますけど・・・。NGOだとお金にならないんですか?

Y: あなたのうちがお金持ちならいいんだけれども、NGOで20万円以上の給料がもらえるケースはかなり少ないと思ったほうがいいよ。

E: それは厳しいですね。

Y: うん。JICA職員は国家公務員なので、月給35万円以上は出るし、お父さんがやってた医者でJICA専門家だと、年間で800万くらい出るはずだよ。俺の嫁さんがやってるから知ってるんだけども。これだと結婚して子どもがもてる。

E: はい。

Y: 月給20万円いかないNGOで旦那さんの給料にもよるけれど、結婚して子ども作るのは基本的に難しいよね。

E: どれがいいのかわからない。(苦笑)

Y: UNICEFは何となく憧れる?

E: 憧れますけど、国連は倍率高い難しいじゃないですか。

Y: 俺の本読んだんだもんね。英語、大学院修士、2年間の海外勤務経験だね。

E: 国連職員の募集要項を、カナダの日本領事館で見たんですよ。それですごく揺れるんですよ。大変だからちょっと無理かなと。

Y: うん。国連は月給50万くらい。国連とJICA専門家は給料が高いんだよ。JICA職員は国家公務員だから月給35万くらいとそれなり。

E: はい。

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