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02:NGOで医療系を

第9章 NGOを続けていく人の道

山本(以下Y): それを半年なり2年なり続けると。この段階でね、1度やってみると話しが変わっていくんだよ。

ちゃーさん(以下C): はい。

Y: 自己満足、言い方が悪いのだけど、自己満足型といって、1回やったから満足しましたと言ってやめてしまう人。これが1番多いんだ。実は。半分以上だ。

C: はい。

Y: それはもうしょうがないんだ。最初のころの俺は、怒ってたんだけれども、実際にはそういう人のほうが多いと気づいて、最近は諦めた。それから、やめる人が7割ぐらい。一部の人が、続けていくんだよ。

C: はい。

Y: 続けている人が、どうやっているかっていうと、極端にいえば2つあって、NGOに残る方法と、国連・JICAに移動する方法がある。NGOに残るには、5つぐらいの方法がある。それらは、
1.有給職員の枠をさがす。
2.バイトをしながら、NGOを続ける。
3.理解ある病院を見つけて、NGOを続ける。
4.海外へ行ったまま帰国せず、どんどん次の派遣先を決める。
5.大学院修士をとって、NGOの上級職を狙う。
まず、NGOの有給職員の枠というのは、実際にはそんなにないので、これをみつけるのは極めて難しい。JANICでよっぽど見張ってても困難。だから、普通の方法は、日本に帰ってきたら、お金を貯めて再度行く方法。看護師なら普通、月給が25万円以上のはずだから、それで1年働ければ、最低300万円だ。ボーナスがあれば400万以上いくよ。そこで100万円から200万円貯めて、お金がたまったら、またNGOで派遣に行くということを繰り返す方法だ。現実的には、これが1番手っ取り早いし、わかりやすい。こうしたある意味、フリーターのような医者や看護師たちのために世の中には、医療系の派遣会社があるんだ。具体的には、メディカル・アソシアメディカル・プリンシプルリンクスタッフジャミックなどがあって、その中のいくつかに同時に登録しておけば、まず、生活に困ることはない。常勤も非常勤(バイト)も、両方紹介してくれる。これが医療系の強みだ。特に、東京・大阪・名古屋などは需要が多いので、バイトの件数も多く、まったく問題なく生活できる。特に東京周辺は多い。

C: はい。

Y: 次が、理解ある病院をみつけるというケースだ。これも有力だ。大学病院でも、小さい病院でも、こうした国際協力をやりたい医師や看護師のために、枠をもうけてくれるところがある。某日本最大の○○会病院などにもあるよ。あと、もうひとつの狙いめが、無医村。現在、小児科、産婦人科の分野は、人材が不足しているので、あなたがそうした技術を持つ看護師ならば、無医村で、高確率でやとってもらえる確率が高い。半年、日本の無医村で働いて、半年、海外で働いてもいいならOKするよ。などと言っても通る可能性はある。

C: はい(笑)

Y: あとは、信じられないかも知れないけれど、海外に滞在したままという方法もある。例えば、俺の知り合いの看護師さんに数人いるのだけど、あるNGOで、スーダンに1年派遣された後に、今度はイラクに1年派遣されて、その後、そのまま南米に派遣された。などというケースもある。というか、ざらにある。つまりNGOは、給料は安いかもしれないが、現地での生活費(食費・家賃)などは、組織が出してくれる。だから、ずっとと派遣されたままであれば、お金などいらないのだ。だって、3食ついて宿泊所もタダ。全部、無料なのだから。考えようによっては、タダで世界旅行ができると思えば、こんなに美味しい商売はない、ともいえる。要するに、家賃や生活費の高い日本に住居を残しておくからお金が必要なのであって、荷物を売り払うか、実家におくって日本に拠点をなくしてしまえばいいんだ。それが不安であれば、すごい田舎に家賃5千円ぐらいの四畳半を借りればいい。もしずっと国際協力をやるなら、こうした方法もかなり有効な方法。

C: はい(苦笑)

Y: それからNGOでずっとやる方法の最後が、NGOの上級職員を目指す方法だ。NGOは、下っ端の間、給料はタダに近いけれど、上級職ってと言って、チームリーダーや事務所のディレクタークラスになると、それなりに高額の給料がでる。国際的な大型NGOであれば、25~50万円の間が保証される。何回も派遣経験を増やすと自動的になれる団体もあるし、大学院で熱帯医学修士や公衆衛生学修士が必要な場合もある。ともかくこの上級職になると、やってることは、国連やJICAと同じでコーディネーター業務になる。つまり、自分で現場にいくことは少なくなるんだ。自分の部下を使って、役割を分担して指導をして何かをやらせる。という仕事になる。あとは計画の運営。プロジェクトの作成、会計、などだ。

C: はい。

Y: 実は、あなたの将来の可能性のひとつに、NGOにしろJICAや国連にしろ、最終的にはコーディネート業務に移行する可能性がある。なぜかというと、現場でやっているとわかるのだけど、自分のやっていることに、色々と疑問を持つようになるんだ。

例えば、こんなこと、いくらやってもきりがないかもしれないな、目の前の数人の人を助けても、何万人もの人たちが飢えて死んでる。本当に俺がやってること、意味があるのかな。やはり自己満足じゃないの?と思う日がくる。だから、やはりその国をまるごとよくするために、コーディネーター業務のほうが重要だ。JICA専門家として入って、その国の保健医療の政策を作っていこう。とか。もしくは、世界全体をよくする保健医療に関する国際法を作って、すべの国の人を「健康」に近づける法律を提供しようなどと思う人がいる。というか、思う人が多いんだ。続けている人の、半分以上がこっちにくる。通常、2年ぐらいやったら、やっぱり自分のやってきたことが本当に意味があるのかを疑問に思うために、日本に戻った後、欧米などの大学院に入って、熱帯医学や公衆衛生学、国際保険医療学などを勉強し、本当は、自分がやったことがどんな意味があったのか、なかったのか、どうすればよかったのか、ということを勉強する人が多いんだ。つまり2年間の海外派遣の後、大学院に1年いって、大学院修士をとる人が多い。その後、NGOの上級職、JICA専門家、国連JPO、などを目指すのが最も多い、「プロの国際協力師の道」なんだ。

C: ・・・。

Y: 今、イメージできないのはよくわかるから、話し半分に聞いておいてもらえればいいんだけど、俺の話しを10年後に思い出してくれると嬉しい。

C: はい。

Y: ともかくNGOの上級職や、国連・JICAに入るためには大学院修士が必要なんだ。通常、医療系の人で、続けている人は、ほとんどが、
公衆衛生学修士Master of Public Health
熱帯医学修士Master of Tropical Medicine
のうちの、どちらかを持っている。こうした修士を取得するには、海外の大学院へ通うほうがお勧めで、例えば、
ハーバード大学大学院・公衆衛生学講座ジョン・ホプキンズ大学大学院・公衆衛生学講座テューレン大学大学院・公衆衛生学講座ロンドン大学大学院・公衆衛生学講座モナッシュ大学大学院・公衆衛生学講座タイ・マヒドン大学大学院・熱帯医学講座ICRCでも、MSFでも、上のほうの人は、みんなこれを持ってやっているということだ。

C: はい

Y: ともかく話しを戻すと、NGOを続けるには、5つの方法があって、まとめると、正職員、バイト、理解ある病院、いいっぱなし、大学院修士、以上の5つだ。

C: はい。

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