NPO法人 宇宙船地球号 補足サイト

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民間組織 02 日本赤十字社・事業局国際部 グランデさん、31歳

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インタビュー 中川

書き起こし 深井

校正 ご本人

監修 山本

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その3. 赤十字国際委員会(ICRC)、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)、各国の赤十字と赤新月社

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グランデ それから、「国際人道法」の分野での活動もあります。「ジュネーブ条約」という、戦争が起きたときに、「武力紛争時の傷病者や捕虜、一般市民等を保護するための条約」がありますが、そのジュネーブ条約の成立に大きな役割を果たしたのが「赤十字国際委員会(ICRC)」です。そこで、今でも赤十字は、国際人道法の普及を積極的に行っています。自然災害の被災者だけではなくて、紛争がおきて難民が出たときには、そういった難民への支援も行っています。その中には保健衛生もあれば、給水活動や食料配布もあります。

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中川 先ほどのお話の中で、赤十字国際委員会というものが出てきましたが。

グランデ そうですね。

中川 「国際的な赤十字の組織」ということで「赤十字国際委員会(ICRC」と、あとは「国際赤十字・赤新月社連盟」というものがあると思うんですが。

グランデ よくご存知ですね(笑)

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補足 (文責・山本) 国際赤十字・赤新月社連盟のことを、IFRC、と略することがあるが、広く一般には、普及していない。赤十字内部でも、使用されていないとのこと。ICRCと、IFRCの違いについては、以下をよく読んで欲しい。

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中川 こちらの「赤十字国際委員会(ICRC)というものは、主に「紛争時に活動」していて、もう一方の「国際赤十字・赤新月社連盟」っていうのは、主に「災害時に活動」して「各国の赤十字や赤新月社連盟の総合調整」をするという理解でいいでしょうか。

グランデ そうですね。簡単に言ってしまえばそうことになります。国際赤十字というと、国際赤十字社みたいな一つの会社があるように書かれることもありますが、結局、我々の活動というのは、「運動体」だということで言われていて、?「赤十字国際委員会(ICRC)と、?「国際赤十字・赤新月社連盟という二つの国際的な赤十字の機関と、?「世界各国にある赤十字社」(あるいはイスラム教の国では赤新月社)、その三つが全て一つの「赤十字の理念」に基づいて活動しているということで、「運動体」と言っています。

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補足(文責・山本): 「赤十字の理念」とは、大筋で、以下。まず、赤十字の創始者とは、スイス人のアンリー・デュナン(1828-1910)という人。1859年、北イタリアにおいて、オーストリア軍と、フランス・サルジニア連合軍が戦っていた。これを、「ソルフェリーノの戦い」と呼ぶが、彼はこの戦争の惨状を目撃した。そして、「傷つき武器を持たない兵士は、もはや兵士ではない。一個の人間として敵味方の区別なく救わなければならない。」と言い、傷ついた兵士への救護活動をした。これが赤十字の理念のもととなっており、以後、「人道・博愛・奉仕」などの言葉に、集約されていったようだ。詳しくは赤十字国際委員会(ICRC)ホームページへ。

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グランデ もともと赤十字の発祥は19世紀のイタリア統一戦争に遡ります。19世紀の「ソルフェリーノの戦い」。戦争の中で本当に敵味方の区別なく、傷ついた人を手助けするということで生まれました。

その時、最初に設立されたのが「赤十字国際委員会(ICRC)」なので、そのような流れもあってICRCというのは主に戦時救護で中心的な役割を果たします。そのような場合、一つの国と一つの国が戦争をするので、やはり中立性を守らないといけない。それから、第一次世界大戦後平時でもやらなきゃいけないこともあるんじゃないかということで設立されたのがこの「国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)」です。自然災害時の災害の調整、あるいは赤十字というと緊急救援というイメージを持つ人も多いのですが、普段からの開発協力にも力を入れています。

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グランデ それはなぜかというと、もう一つの構成要素である各国の赤十字社、赤新月社の存在があります。それぞれの赤十字社は、決して国際的な機関ではなくて、各国にある国内組織です。日本の赤十字のように各国にある団体なんですよね。各国の赤十字社は、災害が起きたら災害救援をすることになりますが、それ以外にも普段から保健医療面での支援をしたり、血液事業をやったりボランティア活動をしたり。そして各国の赤十字社が行う活動の総合的な調整役をするために生まれたのがこの「国際赤十字・赤新月社連盟」ですね。

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グランデ 世界各国にある赤十字社・赤新月社…、資料では183となっていますが、今は186に増えていますね。それ以外にも国際的にまだ承認されてないけれど赤十字社が設立途上にあるというのも数社あります。世界の国の数は数え方にもよると思うのですが、赤十字国際委員会によると194あると言われています。その中で186の社があります。

中川 そうですね。

グランデ それぞれの国にあって、そして地元に根付いた活動をしています。しかし、最近ではICRCだから紛争、それから自然災害は国際赤十字・赤新月社連盟というように切り分けることが難しいこともあります。

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グランデ 例えば2005年のパキスタンの地震の時、被災地は紛争地域でした。あと2004年のスマトラの津波のときにもスマトラ島のアチェ州、それからスリランカも紛争地域です。そのようなところでは、普段から活動している赤十字国際委員会(ICRC)が中心になったり、あるいはそのような場合でも状況によっては国際赤十字・赤新月社連盟が中心になったり。

結局、災害だからICRCは一切手を出さないとか、紛争だから逆に他が手出しをしないとういうことはありません。一応住み分けとしては、紛争地域ではICRCが中心になってやる、災害時では、紛争地域以外の災害では、主に国際赤十字・赤新月社連盟が中心になることが多いです。

あと対応能力のある社、例えばアメリカの場合とかでは、やはりその国の赤十字社が中心になります。

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