NPO法人 宇宙船地球号 補足サイト

.

民間組織 01 国際環境NGO FoE ジャパン 野口栄一郎さん、35歳、男性

.

インタビュー:黒川

書き起こし:海老原、深井

文章校正:山本、ご本人

.

パート13.<これから国際協力を目指す人へ>

.

野口 今おっしゃった一連の仕事っていうか、うーん、関心ある若い人たちに、じゃいくつかこう、言ってみたいことは、というか、自分の経験とか失敗を踏まえていいますけど。長年続けているうちに…(思ったことを話します)。はじめのときは飛び込んじゃえばいいんです。きっと。興味あるところに飛び込んじゃえばいいんです。でもそのうちに、葛藤みたいのが生まれると思うんです。自分のやりたいことは、やっていることは、仕事なのか、活動なのか、運動なのか、そういう葛藤をしますね。でももしかしたら今日のこのインタビューというか、お話はこれから飛び込みたい人たち向けのあれだったら、こういう話はいらないのかも知れません。

.

野口 でもただあのー、正直言って僕とかは、仕事なのか、活動なのか、運動なのか、自分でも迷ったりします。ただその違いがあるって言うことは、小耳に挟んでおくといいかも。

黒川 うーん。

野口 仕事っていうのは、それで飯を食っていくわけですよね。

黒川 はい。

野口 飯食っていかなきゃいけないですね。仕事に対して極端なのは、もう一方の対極にあるのは、運動ですね。これは飯食っていけなくていいんですね。それだし一番理想的なことを言っていていいのは、運動かなー。だし、それにこの世の中に、今の時代もこれから先も、運動は必ず必要だろうなー。

まぁ、みんな葛藤してください(笑)。

.

野口 それでね、多分、答えは自分で出すしかないんですけど、そのときにNGOの人なら、なるべくNGO以外の人がやったこととか、環境とか以外の分野の人が言ったこと、やったこと、こうした方がいいよとか、失敗したことから学ぶのがいいと思いますね。うーん。

黒川 うーん。私はずっと、仕事するようになって、ボランティア、この団体で活動するようになって、常に参考にしていたのがその、職場の、レストランなんですけど、企業の部長クラスなんです。

.

黒川 よく言われている(ことは)、NGOは宗教団体だからとか、代表についていけないのならばやめちゃった方がいいとか、まー、崇拝できないならやめた方がいいとか。でーあとは趣味やサークルとどう違うのか、とか。それによって何になるのとよく言われるんですが。そういうことは考えたことはないですか。自分のやってるのが趣味の一環なのかなーと。

野口 あのー。

黒川 好きなことができて、生活もできていいわよねーと言われたこともあります。

.

野口 あのーありますよ。あのー昔、僕それ言われて、えー10年くらい前に。

黒川 はい。

野口 腹立てていたことがあったんですが、最近はいいでしょー、うらやましいでしょーって言うようにしてます。好きなことやってんですよーって言うようにしています。

黒川 (笑)

.

野口 あのー言われてもいいんですよ、そういう風に。あのー昔ね、これ始めて2年目くらいのころかな。京都で林学やってる先生と会う、話す機会あったんですが、僕そのとき夢中になって熱くなって。ロシアの、これから、守っていかなきゃならない、そういう活動をしているんですって。そのとき実際に僕らもう何ヶ所かで自然保護づくりとか進めてて、やれてる部分もあったんですけど。その林学やっている先生は、一言。「でもそれって趣味でやってるんでしょ」って言われたの。まー、僕そのとき、少ないながらも、ここから給料もらって、ってか、それが収入源で、えー、毎年の毎月の収入源としてやってたから、そのとき自分はムッときたんですけど。

.

黒川 それまでは、バイトかなんかされてたんですか。

野口 大学時代はやってましたけどね。卒業したらここにいきなり常勤ですからね。で、「趣味でやってるんでしょ」って言われてムッときたんですけど。最近はムッとこなくなって、逆に、いかに自分の道楽を、欲望とか願望を、今か将来、まー将来のうちにですね、いかに多くの人たちが面白がれる形で実現するかっていうのがテーマですね。

.

野口 だからもう私的な、個人的なことでいいんですよ。でーそれでやって給料(を)もらう、毎年、毎月給料をもらえる、受け取れてたら、万歳、万々歳じゃないかなって。時々自分って「日本で今、一番自由で幸せな人間、上から10人数えたら、ランクインしてるよなー」って思うことはありますね。本当に、僕ね、誰かに「ここ、ビギン川森林伐採ダメだよ」って、いわれて、命令されてやっているわけでは、全然ないんで。

黒川 うん。

.

野口 たまたまソ連が崩壊して、ここビギン川森林地帯ってところは、まー今でもね、普通の人は行かないところですからね。あのー、たまたま知ったと。で、誰かからここ守れって命令されたわけではないですよね。自分が「ここすんげー、ここにいると、なんかすんげー気持ちいー!だんだん力がみなぎってくる、広い!トラの足跡だー」とか。猟師と一緒に森の中歩いてると「すげー気持ちいー!デカイ木があって、ここを抱っこするとあー気持ちいー!」。(そういう)自分が好きなんですよ。

.

野口 ここの村の人たちとこう、一緒に村人みたいになって。で、ここを伐採されたら村の人たち悔しいだろうなって思うと、自分も悔しい。伐採されたくない。それであのー、森林生態系保全やりたい、っていう、社会貢献、CSRしたい、っていうリコーさん巻き込んじゃえっていう。

黒川 うん。

.

野口 もちろんここはどんな場所で、守れる可能性があるのかないのか。あと守れるとしたらその道筋はどうだっていうのは、ちゃんと情報として出して、話して検討してもらうんですよ。だから、だまくらかして支援させてるわけじゃないんですけど。だけどそうやってリコーさん巻き込んじゃえっていう動機は、ただね、あくまで自分がここを守ってほしいから。で結果としてもし、ここが世界遺産になったとしますよね。したら世界遺産になったとしても、ここの森林地帯というか、川は全然僕のものじゃないんですよ。ただ、世界遺産なだけに、未来の世代の人たちに残してあげられますよね。まさに遺産。

.

黒川 うん、うん。自分の名前じゃなくて…。

野口 あー、いいんです、自分の名前じゃなくていいんです。僕は道楽で生きて。でーでも結果として残ったら、将来ここにあの自然が残ってて、川がいて足跡とかを観(み)に、日本とか色んな国の人が来て。ツアーのガイドをこの猟師とか猟師の息子とかがやって、大勢の人が楽しく過ごせたら、めっけもんやん、と。でも、全然気持ちとしては、そういう多くの人たちの欲望のために、自分を犠牲にしたい、っていうんじゃないですね。自分の欲望のためにやってます。これが僕の欲望です(笑)。

黒川 きれいに締まりましたね(笑)

.

野口 でね、あのーきれいに締まったんですけどね。迷ったときは、東京に居ても、迷ったときはここの川と森のことを思い出しますね。こう目を閉じて森と川。そうすると、もしタイガ、この川、このビギン川、ビギン川がしゃべれたら、今、俺に何をやれって言うかなーって考えますね。

黒川 ふーん。

野口 僕はあまり神様、仏様、神仏は信じないんですけど。

黒川 うん。

.

野口 ここに行くと、ここのねー、山とか岩とか川とかがね、何かを言ってるような気がするんですよね。お前あれやれ、お前東京に住んでるんだったらこれやれとか、お前これやれるんじゃないかとか。お前これやったら、伐採止められるんじゃないかって。世界遺産になるかも知れねーんじゃないかとかって。あのー、世界遺産とか何でもいいんだけど、とにかく伐採されるのをなんとかしろって、こう言ってるような気がするんですよね。

黒川 うーん。

.

野口 気の迷いかも知れないですけどね。えーそれを考える。ちょっと待って待って、今、タイガがしゃべれたら、俺に何しろっていうだろって。段々こういうこと口走ってると、なんかあのー、お告げがとかっていうなんか、宗教っぽくなるかも知れないですけど。

黒川 いえいえ、自分を見つめる客観的な目っていうのを常にもっていないと。やはりあのー自分の思い込みで活動しているのか、それで傲慢なのか、勘違いなのか、わからないですよね。

.

野口 そうですね。うーん、なんとなく思うのは、このタイガ、この森は、今既にトラやウデヘ族いますけど、日本人とか、あのー外国のツーリストとかも来ていいぞって言ってるような気がするんですよ。

黒川 うーん。

野口 あのー将来、大勢来すぎたらね、それはまた自然へのダメージを抑えるための、またルール作りとか必要になると思うんですけど。ま、来ていいぞって言ってるような気がするんで。だから僕が、あと例えば3年で死んだとしますよね、ここが世界遺産になって、あと3年で死んだとしますよね。多分あの、ビギン川が好きだったやつとか、大法螺吹きとして記憶に残っても残らなくてもいいんですよ。けど、ただここが伐採されてほしくないですね。本当にいいところなので。本当にオススメです(笑)。

.

野口 まとめづらいでしょ。こんな…。

黒川 ありがとうございます。

野口 これが昔つくったブックレットみたいなやつです。

黒川 ありがとうございます。

野口 あのー日本人がここの、ロシアの木を使ってきた歴史みたいなもので。

黒川 ありがとうございました。

野口 株式会社リコーさんの森林生態系保全、あのーとってもいい取り組みなので、注目していきたいですね。

.

.

.

NPO法人 宇宙船地球号 補足サイト・トップへ

NPO法人 宇宙船地球号 メインサイト・トップへ